回顧

僕は幼少の頃より友達が少なく、昔から物思いに耽ることが多い。
小学校に入学して３年目あたりだと記憶しているが、その頃、死後の自分について考えたことがある。
死んだら幽霊になる。地獄あるいは天国へ行く、という発想はなく、なぜか「死んでいる」という状態は「一切の外部からの情報を絶たれ、思考することもできず、永遠に暗闇を漂うもの」という結論に至った。僕は「死」とは「夢を見ずに眠っている状態」にきわめて近いものだと考えた。

それからの僕は毎晩「夢を見ずに眠っている状態」を体感しようとし、毎朝それを体感できたか記憶を確認したが、僕の定義した「死」（あるいはそれに準ずるもの）はそもそも実感できないことに気づき、臨死することを諦めた。
もしかしたら毎朝期待を裏切られることに飽きてしまっただけかもしれないが、今はもう思い出せない。